
伝統的製法で作られた墨。伸びが良く、上品な色の墨です。
上品な色の墨

奈良南松園製の純菜種油煙墨で、伸びが良く、濃墨では艶のある黒、淡僕では上品な茶色を帯びた黒になります。
昔ながらの伝統的製法による手作り品です。
墨の原材料と価値の違い墨の原材料は膠(にかわ)と煤(すす)からなっています。
煤は菜種油から採ったり胡麻油から採ったり桐油から採ったりと種類が色々です。
以下が煤の種類による差です。右側に行くほど貴重になり、墨の値段も上がってきます。
カーボンブラック<鉱物油煙(石油から採ったもの)<菜種油煙<胡麻油煙・桐油煙等
また、同じ油でも取れる煤の量・質によって値段が変わってきます。
また、墨をつくる木型でも変わってきます。
現在では型を作成するのに5万円から10万円かかるそうです。同じ型で作る墨の量でも金額が変わってきます。
他には松園墨というものがあります。枯れ松を燃やして煤を採るのですが、現在は枯れ松が中々採れなくなっており、希少価値が高く、値段もその分高くなっています。昔は松煙墨は庶民の墨といわれて一番安価なものだったようです。
墨は製造してすぐはまだ柔らかく、1年ほど乾燥させないと使えません。
ただ、1年乾燥させた墨は、磨ったときにまだ粘りが出てきます。この粘りには膠が関係してきます。膠は時間が経過すると徐々に劣化していき、墨色も変化していきます(墨の色に深みが出てきます。どう変わっていくかは墨の種類にもよります)
墨は1年ずつよくなっていきますが、それだけ保管に手間がかかるため、完成してから10年経つごとに値段が上がっていきます。それが上記にもあるように10年たつと墨は良くなる、という所以です。
ですので、出来てから時間が経過したものほど良い墨、ということになります。
○○は日本製が良い、○○は中国製が良い、と書の道具ではよく言われます。
印泥(印を押すときの朱肉)に関しては断然中国製が良いです。他のものに関しては書く文字によってきますので、現在では一概にどちらがいいとは言えません。
中国製の紙は滲みが強く、日本製の紙は滲みが弱いです。
墨は日本製が油煙墨がメイン、中国製は松煙墨がメインです。磨り味は日本製のほうが柔らかいので磨りやすいです。ただ、墨色がどちらも違いますので好き好きです。
筆に関しては原料はほとんどが中国産です。しかし、作る技術は日本のほうが上です。
硯ですが、原料となる硯石は中国も日本も現在では良い石が採れなくなっています。(掘り尽くしたと言われています)中国産と日本産では石質が違うので、これも好き好きです。
以上のことから、現在では特にどちらが優れている、というのは無く、それぞれが自分に合った道具を見つけることが大事になってきます。
みなさんも自分に合った道具を見つけ、日常に書を取り入れてみてはいかがでしょうか?

矢萩春恵(やはぎ しゅんけい)
書家。東京生まれ。
共立女子薬科大学(現・慶應義塾大学薬学部)在学中に出会った和歌の先生を通して書に興味を持ち始める。
10年後町春草、後に手島右卿に師事。
日本だけでなく国際的にも活躍しており、香港、フランス、アメリカ、インドなどでも個展を行う。外務省訪欧文化施設団員として、ヨーロッパの主要都市で作品展を開き、書のパフォーマンスを行ったり、1989年~1991年にはハーバード大学で客員教授として東洋美術史学科の「書」の講座を3年間担当した。
その多岐にわたる活躍から、先生の下には日本人だけでなく海外の生徒も多い。現在も個展を開くほか、夏雲会と呼ばれる書の教室にて沢山の生徒に書を教えている。
また、ボランティア活動にも意欲的で1987年より財団法人日本ユニセフ協会のチャリティ年賀状にボランティアとして参加。1988年「辰」から2010年「寅」まで23回毎年手がけている。
現在、財団法人独立書人団監事、毎日書道展参与会員、夏雲会主宰、財団法人橋田壽賀子文化財団評議員

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